奥武蔵(1997.8.15)


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 この夏は教員採用試験に伴う全国行脚で、旅らしい旅をしていないといえばうそになるけれども、苦しい旅の中で努力して楽しもうとしても限度はあるというもの。研究室を休みまくったに関わらず普通にもらえた夏休みを有効に活用すべく、今年も日帰りの旅に出た。

 電化されてからは初めての八高線、東飯能で時間があったので、少し飯能の街へ。いわれはわからないが酒饅頭が名物のようで、そこら辺のお菓子屋で売っていたので、お行儀悪いが食らいつきながら……東飯能からは西武線でほんの一駅なのだが、この一駅で、車窓の雰囲気は都会から静かな山間の平地へと、大きく変化する。

 高麗駅から奥武蔵自然歩道という、整備された遊歩道を進んでいくと、すぐ巾着田という所に着く。要するに、高麗川が蛇行している内側の、水の便のよいところに作られた水田なのであるが、水田は今や半分ほどが荒れ放題、田圃をつぶして作ったのか運動場もあり、蛇行する川沿いにはバーベキューが立ち並ぶ。ここには曼珠沙華の群生地がある。曼珠沙華ってなんだったっけ、と思いながら足を踏み入れると、すでにオレンジ色の花がちらほら。イコール、彼岸花というわけだ。秋にはオレンジ一色になるんだとか。そのときに来てみると、よりいっそう、きれいなのかもしれない。そして、巾着田を取り巻く川もまた、すがすがしい流れだ。

 歩道に沿っていくと、日和田山というちょっとした山の中へ入っていく。薄暗くてじめじめした山道の中いっしょうけんめい登っていくと、金比羅神社の展望台に着いた。ここからは、さっきの巾着田を含めた高麗郷の全景、そして、山並みの向こうへ西武線に沿って視線を動かすと、飯能のビル群もはっきり見える。天気は決して良くないが、それでもなかなかきれいなものだ。

 日和田山から高指山、物見山へと、山をたどって行った。鬱蒼とした雑木林のなかの滑りやすい道であったが、時々は展望が開け、山並みに囲まれた静かな田舎の風景が広がった。ヤセオネ峠から別ルートに移り、宿谷の滝を目指したが、この道が異様に急な道、道というよりも崖そのものといった感じだった。この恐怖感、たとえるならスキー場の上級者コースに放り出されたような。ただそれと違って、角張った岩の露出する道、転んだら確実に血を見ることになる。苔むす岩は水をたっぷり含んで滑りやすく、なかなか大変だったが、雑木林の沢まで降りると、ようやく平坦になった。

 道のぎりぎりまで迫る草と、蜘蛛の巣と戦いながら道を進むと、目指す宿谷の滝があった。 10メートルくらいの落差のあるほぼ垂直な岩盤に沿って、水は細く、枝分かれすることなく素直に滝壺まで落ち込む。滝にもいろいろなスタイルがあると思うが、まっすぐなきれいさがある。

 宿谷の滝から、鎌北湖へも、似たような道が続く。所々、道沿いには真っ赤な岩(チャート?)が露出し、岩が削れて土が真っ赤になっている。地面をよく見てみると、その色が黄色くなったり、赤くなったり、白くなったり。垂直にすぱっと切ってみると、たぶん、きれいな地層になっているのだろう。

 鎌北湖は、小さなダム湖だった。つり客は何人もいたが、貸しボートはあんまり繁盛してなかったようだ。ダム湖故、湖岸には斜面がそのまま立ちはだかり、湖面は山を映して深い緑色、静かな雰囲気を醸し出している。

 ここから八高線の毛呂駅まではバスがあったと思ったのだが実際にはなくて、駅まで歩くことになった。雑木林を抜けたところに広がっていたのは、あくまでのどかな、のんびりとした田舎の風景だった。


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